こんにちは。ロボ部員、okamotoです。
2014年、ソフトバンクのPepperが登場して以来、ロボット界隈のニュースがにわかに盛り上がりを見せています。三菱東京UFJ銀行がアルデバランロボティクスの「Nao」を案内係に採用するなど、身近なシーンでもいよいよロボットが・・・!という予感を感じさせるようなニュースもありました。
これからロボットってどうなっていくんだろう。すごい気になりますね。そこで我々ロボ部。自らの勉強も含めて、そんなロボットの世界に大きな一石を投じそうな企業を調査しつつ、ぜひ皆さんにもご紹介していきたいと思います。
では、第一弾!知っている人にとってはムチャクチャベタですが「iRobot」を取り上げたいと思います。
iRobotはどんな会社?
iRobot。聞いたこともある人も多いのでないでしょうか。そうです。自動お掃除ロボット「ルンバ」を開発した会社です。
部屋の中を自動で動きまわり、お掃除を完遂してくれる便利な家電ロボットですが、その愛らしい動きから絶大な人気を誇っています。ルンバの正しい飼い方とまるでペットのようにかわいがるファンもいたり、マリオの亀としていじられてみたりとなかなかにくいポジションを占めていますね。
そんなルンバを見事に世の中に送り出したiRobot。ロボ部員okamotoはiRobotのことをまったく知らなかったので、新興の家電ロボット企業かな〜ぐらいしか思っていたのですが、よくよく調べてみると、実はそうでもなかったのです・・・!
iRobotは1990年に設立されたロボットカンパニー!
iRobotはじつは今年で25周年を迎える企業。1990年にマサチューセッツ工科大学で人工知能を研究していたロドニー・ブルックス、ヘレン・グレイナー、現CEOコリン・アングルの科学者3名によって設立されました。当時、すでにロドニー・ブルックスはMITの教員としてロボット工学の世界では著名な人物だったそうで、
iRobotの最初の開発したロボットは火星探査向けのロボットだった。
この3人が1番、最初に開発したロボットは「Genghis(ゲンギス)」という6足歩行の昆虫型ロボット。NASAの火星探査ロボットの原型として作られたロボットだそうです。家電とは程遠い、宇宙向けのロボットですね。
Genghis(ゲンギス)どういうロボットか。Wikipediaの紹介ではこんな風に紹介されています。
「ゲンギスはいわゆる従来型の脳を持たず、「神経ネットワーク」のみで環境から学習する包摂アーキテクチャ(Subsumption Architecture; SA)と呼ばれる行動型システムを採用している。脳を持たないにもかかわらず、ゲンギスは従来型の人工知能(Artificial Intelligence; AI)を搭載したロボットよりも素早く行動する。またプログラムのサイズも従来型の人工知能搭載型ロボットの約1/1000であり、ソフトウェアの変更や追加も容易で、CPUやメモリーなどのハードウェアも最小限の構成で済むという特色を有する。」
筆者は技術的な詳細はわかっておりませんが、AIではなく、神経ネットワークで学習するアーキテクチャとはなんともすごそうです!
ちなみにGenghis(ゲンギス)の見た目はこんな感じです。
うおぉおぉぉぉぉ!!! もそもそ動きそうな感はいまのルンバに通じるところがある・・・?
ビジネス的には辛い局面もあった
ただ、やはりそうはいっても1990年代。日本ではスーパーファミコンの発売がなんと1990年。そんな時代から彼らはロボット開発に情熱を傾けていました。先駆者の悩みでしょうか。やはりビジネス的には色々大変な時期もあったようです。
『実際にはずっと赤字続きだったということはなくて、1990年から1997年までは利益も出なかったかわりに、損失もまったく出てなかったんです。その間は、とにかく依頼のあったさまざまなロボットを作り続け、さらに今度はどんなロボットを作ろうかと考え、とてもエキサイティングな時でした。1998年にいよいよその後のiRobotを決定づける明確なビジネス思想が生まれ、そこから2003年までが実はずっと赤字でした。ですが、それ以降はずっと黒字となっております。赤字となった期間もずっと我々がロボットを作り続けられた理由は、家庭用ロボットや政府用ロボットが、今後成長し続けるロボット産業の核となると確信があったからです。』
そんな積み重ねの時代があったことを、コリン・アングルはこちらの記事でも語っています。そして、その長い積み重ねのプロセスの中で学んだことが、
『人間の嫌がる『Dull(退屈)』『Dirty(不衛生)』『Dangerous(危険)』な作業を代替えするというところに需要がある』
ということ。
この学びからか、現在、iRobotは「Dull、Dirty、Dangerous(退屈、不衛生、危険)な仕事から人々を解放する」という理念を掲げながら、多くのロボット開発を行っています。苦難の時代からの学びがそのまま理念になって体現されているなんて、素敵な会社ですね!
転換の1997年!
さて、そこからどういう風にiRobotは進んでいったのか。彼らにとって大きな転換となる年が訪れます。
それが1997年。
まず、この年、コリン・アングルと彼のチームがNASAの依頼により火星探査ロボットをデザイン。その功績により、”NASA GROUP Achievement Award”を受賞します。
この受賞が影響したかは定かではないのですが、この年にDARPAからの資金供与を受け、人の立ち入ることのできないエリアで作業できる軍事用のロボット「Urbie(アービー)」を開発します。 そして、この年、米SC Johnson Wax社とパートナーシップ契約を結び、共同でワックス掛け用のマシン「NexGen Floor Care Solution(ネックスゲン・フロア・ソリューション」を開発することになります。
実はこの「Urbie(アービー)」「NexGen Floor Care Solution(ネックスゲン・フロア・ソリューション」の2つのロボットの開発は、その後のiRobotが軍事用/民生用ロボットの2軸でロボット開発を進めていく上での大きな転換点になります。
1998年にPackBot誕生!
1997年にDARPAからの資金供与を受け開発した多目的作業用ロボット「Urbie(アービー)」iRobotはその技術をベースに「PackBot(パックボット)」というロボットを開発します。
このロボットはロボットとしての性能は向上しつづけていますが、現在でも同じ名前で提供されていいます。たとえば、イラクでは紛争地域などの爆弾処理のために導入されているそうですが、街の路肩に仕掛けられた爆弾によって多くの米軍兵士が命を落としていたところをPackBotを利用した遠隔操作による爆弾処理によって、犠牲者が減少。米軍からも表彰されたそうです。じつは、日本でも地震の被害によって立ち入ることのできなくなった福島原発にも導入されていたりするそうです。
驚きですね!!
2002年にルンバ誕生!!
そして、2002年。iRobotの名前を世界に広めるきっかけとなったロボットが登場します。そうです。ルンバがいよいよ登場します!
さきほど紹介した1997年に共同開発した「Auto Cleaner(オート クリーナー)」。この開発中にデザインチームのエンジニアが安価に家庭用掃除ロボットを作れないか?と興味を持ったことからルンバのプロジェクトははじまったそうです。プロトタイプ製作から製品化までになんと5年もの歳月をかけ、初代ルンバはいよいよ2002年にリリースされました。
iRobotがそれまでに培った軍事用技術もふんだんに取り入れられたそうで、初代ルンバに搭載されている「AWARE(アウェア)」という人工知能は、陸地の地雷を探査・除去するためのロボット「Fetch(フェッチ)」を開発する際に開発した人工知能をベースとしていたりするそうです。
地雷のお掃除技術を家庭用のお掃除技術に転用するなんて。なんてイノベーティブ。。。
ロボ部的、胸熱ロボット!
ご存知のとおり、いまではすっかり世界的なロボットカンパニーと名を馳せているiRobotですが、こんな紆余曲折の歴史があったんです。では一方で、視点をいまに移してみると、iRobotは現在どんなロボットを提供しているんでしょうか?
ロボ部的に胸熱なロボットを取り上げてみたいと思います。
710 Kobra
PackBotをさらに巨大にした多目的作業用ロボット710 Kobra! どんな状況でもものともしなさそうな存在感。そしてどっしりとした重量感。そしてぐいぐいと動く機動力。冷静になってみると遠隔で動く小さいショベルカーやん的な側面もなきにしもあらずですが、いいね!をしたいと思います。
リモートコミュニケーションAva500
家庭用ではなく、オフィス用のリモートコミュニケーションを実現するためのAva500! 遠く離れた人がまるで近くにいるかのような存在感でコミュニケーションできるロボットです。実際に人と同じぐらいよりも人よりも大きいスペースを使っていそうなので、実際に導入がどこまでされるかは不明ですが、リモートコミュニケーションシステムはどこかの会議室に据え置きになっていることが多く、移動ができる点がすごいと思いました。操作する側はどうなのかはちょっと不安になりますが、この大胆不敵さは胸熱だと思いました。
iRobotの今後について
今後はRoombaやAva500といったフロアを動き回るロボットに、家の中の環境をGPSや3D mappingによって把握することができる機能をつけ、家の中のモノを動かしたり、取ってきたりすることができるようにしていきたいと考えているようです。家庭内ロボットを開発したいと考えている方は、要注目ですね!